お正月という時間は、
未来を決めるための場所ではないのだと思います。
何かを始めるためでも、
目標を書き出すためでもなくて。
むしろ一度、
日常の流れから静かに外れて、
「ここまで、よく生きてきた」
と、自分にだけ聞こえる声で言ってあげるための時間。
私自身、忙しさに追われているときほど、
人生について考える余裕がなくなっていました。
立ち止まると不安になる気がして、
考える前に、次の予定で心を埋めてしまう。
けれどお正月だけは、
どこへ急がなくてもいい空気が流れています。
その静けさの中でふと、
「このままでいいのかな」と思う瞬間が訪れる。
人生を考える、というと、
何か大きな答えを出さなければいけない気がしますが、
本当は、そんな必要はありません。
人生を変えなくていい。
決断をしなくてもいい。
来年の自分を定義しなくてもいい。
ただ、
問いを、胸の奥にそっと置いておく
それだけで、十分なのだと思います。
映画は、その問いを無理に言葉にしなくても、
そばに置いておける場所を用意してくれます。
説明も、結論も出さずに、
人生の途中にいる感覚を、そのまま映してくれる。
人生を考えるお正月に向いている映画は、
背中を強く押す作品ではありません。
むしろ、立ち止まっている自分の隣に、
何も言わずに座ってくれるような物語です。
観終わったあと、
何も変わらなくてもいい。
ただ、少しだけ視界が澄んだり、
自分の呼吸を思い出せたなら。
それはきっと、
これからを無理に照らす光ではなく、
足元を静かに照らしてくれる灯り
なのだと思います。
もし今夜、“答えを探す”より“静けさに預けたい”気分なら。
まずは配信サービスの検索窓に作品名を入れて、予告だけ見てみても大丈夫です。
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※配信状況は変わることがあります。見つからないときは別サービスでも同じタイトルを検索してみてください。
なぜお正月に「人生を考えたくなる」のか

年末の慌ただしさがひと区切りついて、
世の中全体の音量が、
すっと下がる瞬間があります。
時計の針が、少しだけゆっくり進み始めるような感覚。
私は毎年、その静けさに包まれると、
普段は意識の奥に押し込めている気持ちが、
ふいに浮かび上がってくるのを感じます。
仕事に追われている間は、
考えないようにしていたこと。
先延ばしにしてきた違和感。
「まあいいか」と流してきた小さな疑問。
それらが、お正月の静かな空気の中では、
無理に呼び出さなくても、
自然とこちらを見つめ返してきます。
「このままでいいのかな」
「私は、何を大切にしたかったんだろう」
こうした問いが浮かぶと、
つい「不安になっている自分」を責めてしまいがちですが、
私はそれは少し違うと思っています。
心理学的に見ても、
人は環境刺激が減ったときに、
初めて自分の内面に意識を向けられるようになります。
お正月に人生を考えたくなるのは、
何かが足りないからではありません。
これまで後回しにしてきた自分を、ちゃんと迎えにいく余裕が生まれた
ただ、それだけのこと。
言い換えるなら、
お正月に人生を振り返りたくなるのは、
自分を大切にしようとする、
とても健やかな反応です。
とはいえ、
その問いに向き合う気力がない年もあります。
考えること自体が、少し重たく感じる日もある。
そんなときは、無理に答えを探さなくていい。
問いを閉じて、
心を休ませることも、立派な選択です。
もし今、
何も考えたくない、何も決めたくないと感じているなら、
何もしたくないお正月に観る映画
から、静かに時間を預けてみてもいいと思います。
考える前に、まず休む。
お正月には、その順番が、よく似合います。
人生を考えたい時に向いている映画とは

「人生を考えたい」と思うとき、
つい、何かヒントをくれる映画や、
前向きな答えを用意してくれそうな作品を探してしまいます。
けれど実際に心が救われたのは、
何かを教えてくれる映画よりも、
何も断定しないまま、そばにいてくれる映画
でした。
人生を考えたいときほど、
判断や結論は、心にとって重たいものになります。
だからこそ、映画に求める役割も、
少しだけ変えてみていいのだと思います。
① 人生を「肯定もしないし、否定もしない」
人生を考えたいときに向いている映画は、
成功を持ち上げすぎず、
失敗を裁くこともしません。
どちらかに答えを寄せるのではなく、
成功も、後悔も、迷いも、
すべてを同じ距離から見つめる。
映画の中で誰かの人生を、
良いとも悪いとも言われない時間は、
観ている側にも、
自分の人生を裁かなくていい自由
を与えてくれます。
私自身、
何かを決めなければならない時期に、
こうした距離感の映画を観て、
「決めなくても、今は大丈夫なんだ」と、
ふっと肩の力が抜けたことがありました。
② 答えを用意しない
人生を考えたいときほど、
明確なメッセージや結論は、
心に入りづらくなります。
それよりも、
物語の終わりに、
「これはどういう意味だったんだろう」と、
静かな余韻だけが残る作品のほうが、
後から何度も心に戻ってきます。
結論を提示しない映画は、
観終わった瞬間に完結しません。
日常に戻ってからも、
ふとした瞬間に、
別の角度から思い出される。
そうして時間をかけて、
その映画が、
観た人それぞれの人生の一部になっていく。
私は、人生に迷っているときほど、
すぐに効く答えよりも、
あとから静かに効いてくる物語
を選ぶようにしています。
③ 時間の流れがゆるやか
人生について考えるとき、
心はすでにたくさんの情報でいっぱいです。
展開が早く、
感情の起伏が激しい映画は、
その情報量の多さが、
かえって疲労になってしまうことがあります。
だからこそ、
人生を考えたいときには、
物語のスピードも、
自分の呼吸と同じくらい
で進んでいく作品が向いています。
何も起こらない時間。
ただ歩く、食べる、話す。
その積み重ねの中で、
「生きる」ということが、
特別なイベントではなく、
日常の連なりとして感じられるようになります。
人生を考えるために、
人生を大きく動かす必要はありません。
映画の中のゆるやかな時間に身を委ねながら、
自分の内側のリズムを、
少しずつ整えていけばいい。
そうして観終わったあと、
何も決まっていなくても、
何も変わっていなくても、
それで十分なのだと思います。
人生を考えるお正月に観たい映画7選

人生を考えたいお正月に向いている映画は、
気持ちを無理に前向きにさせるものではありません。
「こう生きるべきだった」という後悔も、
「もっとできたはず」という焦りも、
いったん脇に置いたまま、
人の人生を、静かに眺める
そんな距離感をくれる作品たちです。
ここから先の7本は、“結論をくれない優しさ”を持った作品たちです。
観る前に、配信で「今すぐ再生できるか」だけ確認しておくと、気持ちが途切れにくくなります。
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① アバウト・シュミット
定年を迎えた男性が、
これまでの人生を振り返りながら、
ぽつりぽつりと「自分」という存在を確かめていく物語です。
何かを成し遂げたわけでも、
劇的に人生が変わるわけでもありません。
ただ、時間が流れ、
思い出が浮かび、
取り返しのつかない選択が静かに横たわっている。
私がこの映画をお正月に観たとき、
胸に残ったのは、
「これでよかったのか」という問いが、
誰にでも、平等に訪れるものなのだという事実でした。
映画は、その問いに答えを出しません。
けれど突き放すこともない。
問いを抱えたまま生きる姿そのもの
を、淡々と、でもとても誠実に描いています。
② ワンダー 君は太陽
一見すると、
希望や勇気をもらうための映画に見えるかもしれません。
けれど、お正月に静かに観ていると、
この物語が伝えているのは、
「人生は、劇的に変わらなくてもいい」という感覚なのだと気づきます。
誰かを思いやること。
見て見ぬふりをしないこと。
ほんの少しだけ勇気を出すこと。
人生を形づくっているのは、
大きな成功や転機ではなく、
そうした日々の小さな選択なのだと、
この映画は押しつけがましくなく教えてくれます。
私自身、
「もっと何かしなければ」と焦っていた時期にこの作品を観て、
すでに自分がしてきた選択の中にも、
ちゃんと意味があったのかもしれないと、
少しだけ自分を許せた記憶があります。
③ ブルーバレンタイン
愛が始まる瞬間と、
愛が壊れていく過程を、
同時に描いた作品です。
正直に言えば、
楽しい映画ではありません。
観ている途中で、
胸がきゅっと苦しくなる場面もあります。
それでも、お正月にこの映画を観る意味があるとしたら、
「失敗した関係」や「終わってしまった時間」を、
なかったことにしない視線が、
そこにあるからだと思います。
愛が終わったからといって、
その時間が無意味になるわけじゃない。
うまくいかなかった選択も、
確かに、その時の自分が必死に選んだ人生だった。
人生を考えるお正月にこの作品を観ると、
過去を美化することも、
切り捨てることもせず、
「あの時間も、自分の人生だった」
と、静かに受け止められるようになる気がします。
④ 人生はビギナーズ
人生をやり直す、という言葉には、
どこか「若いうちにしか許されないもの」という響きがあります。
でもこの映画は、その前提を、
とても静かに、やさしく裏切ってきます。
失敗してからの人生。
予定通りにいかなかったあとの時間。
そこから始まる物語を、
決して「遅れ」や「敗北」として描きません。
私がこの作品をお正月に観たとき、
強く残ったのは、
再出発に、締め切りはない
という感覚でした。
人生は、何度でも初心者に戻っていい。
その事実を、
声高にではなく、
日常の延長として見せてくれる、
とても誠実な一本です。
⑤ そして父になる
人生には、
正解と不正解がはっきり分かれる選択よりも、
「どちらも間違いではない」選択のほうが、
圧倒的に多く存在します。
この映画が描いているのも、
まさにそうした選択の積み重ねです。
血縁か、時間か。
社会的な成功か、感情のつながりか。
どれも簡単に優劣をつけられるものではありません。
私がこの映画を観るたびに思うのは、
人生とは、
「正解を選ぶこと」ではなく、
選んだあとに、どう向き合い続けるか
なのだということです。
お正月という節目に観ると、
過去の選択を裁く気持ちが、
少しだけ和らぐ。
「あのときの自分なりに、ちゃんと理由があった」
そう思わせてくれる物語です。
⑥ ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
人生には、
どうしても受け入れきれない喪失があります。
この映画は、
その喪失を「乗り越えるべき出来事」として描きません。
むしろ、
抱えたまま生きていく時間そのものを、
とても丁寧に追いかけています。
人は、
何かを失ったあとでも、
笑ったり、迷ったり、
前に進んだり、立ち止まったりする。
人生が思い通りにならなかったとき、
それでも人はどう生きていくのか。
その問いに、
答えではなく「過程」で寄り添ってくれる映画です。
⑦ フォレスト・ガンプ
人生を深く考えたいお正月に、
あえてこの映画を選ぶことに、
最初は少し意外さを感じるかもしれません。
けれど観終わる頃には、
人生を考えすぎないという態度も、ひとつの誠実さ
なのだと気づかされます。
彼は、人生の意味を言語化しません。
未来の設計図も描かない。
ただ、目の前にある出来事に、
その都度、まっすぐ反応していくだけです。
それでも人生は、
不思議とつながり、広がっていく。
考えすぎて疲れてしまったお正月に、
「そんなに構えなくてもいい」と、
肩の力を抜かせてくれる一本です。
もう少し現実寄りの温度で、
大人の人生を静かに見つめたいなら、
大人のお正月に観たいヒューマンドラマ
へ進んでみてください。
人生は、今すぐ答えを出さなくていい

映画を観たあと、
「これからは、こう生きよう」
そんな決意を持てなかったとしても、
それは失敗でも、物足りなさでもありません。
私自身、人生を考えるために映画を観て、
何ひとつ答えが出ないまま、
ただ夜が静かに終わっていったことが、何度もあります。
でも振り返ってみると、
そういう夜のほうが、
心の奥では、確かに何かが動いていました。
映画がくれるものは、
明確な答えよりも、
「こういう生き方も、世界には存在している」
という視野の広がりであることが多い。
それに気づけただけで、
心の中の通路は、少しだけ増えています。
今すぐ歩かなくてもいい。
ただ、道があると知ること自体が、大切なのです。
心理学の世界でも、
人は「結論を出した瞬間」より、
問いを安全に保留できたときに、
回復へ向かうと言われています。
だから、
観終わったあとに何も決められなくてもいい。
人生の設計図が白紙のままでも、問題ありません。
もし今、
考えること自体がつらいほど疲れているなら、
無理に人生と向き合わなくてもいい。
そんなときは、
何もしたくないお正月に観る映画
から、心をゆっくり現実に戻していくのも、立派な選択です。
お正月は、
人生を変えるための季節ではありません。
ここまで生きてきた自分と、静かに和解するための時間
なのだと、私は思います。
もし今夜、すべてを理解しなくてもいいから、ひとつだけ物語に触れて眠りたいなら。
配信のトップ画面を眺めて、「これなら受け取れそう」と思えた一本を、そっと選んでみてください。
Netflixで今夜の一本を探す
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※配信状況・料金・無料体験の有無は変更される場合があります。登録前に各サービスの表示をご確認ください。
※配信状況・作品ラインナップは変更される可能性があります。
本記事は特定のサービスや作品の視聴を強制するものではありません。
参考:映画.com / IMDb



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